もえぎの忘備録

過去関心空間でのキーワードです

柄澤 齊展ー宙空の輪舞

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栃木県立美術館

2006年7月16日(日)~9月3日(日)http://www.art.pref.tochigi.jp/jp/...

 その独逸語の先生は娘の名前を 梓 とした。

 梓弓(あずさゆみ)…遠く万葉の時代から梓の樹には霊性が宿り

梓の樹で作られた弓弦を打ち鳴らして神霊・生き霊・死霊を呼び、憑依させ

託宣をしたのが 梓巫女(あずさのみこ)、、、 

学生時代、記紀歌謡の講義中 気になって書き留めた記憶

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『 動植綵絵 』 伊藤若冲

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8×10 大判退色気味のカラーポジフィルム

ここに収められていた二幅ずつの絵画 多くの鶏、、

個人的趣向で鶏が大嫌いな者にとって 

それは醜悪と憎悪のきわみ  

 

ぬばたまに黒耀変化する羽

鱗状肉塊トサカにうづもれた妖しい眼光

するどく鋭角に突き出る鱗状蹴爪

不倶戴天の敵 

愚鈍な軍鶏・雌雄鶏の画像が 

今 まさに生きて飛び出さんばかりに活写され尽くしているこの恐怖を

一体 誰が理解できよう、、、

たかが 写真の中の絵 に過ぎないというのに

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柄澤 齊 木口木版画集

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Hitoshi KARASAWA The Wood-Engraving Prints 阿部出版 1991.4.11

 個展の折に 銀座シロタ画廊 で購入

1971-1991 木口木版作品が網羅

 

初めて作品を間近で観たのは確か77ギャラリー

標本箱のような箱に 美しい蝶翅を持つ 

いだきあうちいさき男女が納められていた。

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善悪の彼岸 Beyond Good and Evil

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監督:リリアーナ・カヴァーニ

主演:ドミニク・サンダ(ルー・サロメ)

   エルラルド・ヨセフソン(フリードリヒ・ニーチェ)

   ロバート・パウエル(パウル・レー)

脚本:リリアーナ・カヴァーニ書き下ろし

音楽:グスタフ・マーラーさすらう若人の歌」他

 

 ルー・サロメ(Lou Andreas Salome)

1861年ペテルスブルグ生まれの実在の人物。

ワグナーを理解し、ニーチェにインスピレーションを与え、リルケには詩的な示唆を、晩年にはフロイトのよき協力者だったという 自らも研究者。

 

19世紀末のローマ そこにはヨーロッパ各地から芸術家や文人が集まり、サロンは優雅な退廃の舞台にもなった。

 

哲学者ニーチェの生涯の中でも謎が多いとされる1882年~、弟子格のパウル・レーとロシア生まれの才女ルー・サロメとの『聖三位一体』と名づけられたの3人の同棲生活。

 しかし 嫉妬が原因でのあっけない破綻。

 フリッツ(ニーチェ)は 梅毒 幻影 狂気 に苛まれ

 パウルは慈善診療所で男色の餌食にされ不遇な死を遂げる。

 

 帝政ロシア黄金時代に教育を受け

やがてドイツ文化研究に精進したルー・サロメの、自由奔放・波乱万丈、

観念の世界をやすやすと飛び越えて実践に移す強烈な意思、激しいロマンチシズムが印象に。

  そして ファムファタル としての 

 ドミニク・サンダ の蠱惑的な微笑み

 

衣装:ピエロ・トージ

カメラ:アルマンド・ナンヌッツィ

ともに数々のビスコンティ映画を手がけた名手だけあって

画像・調度・色彩の美しさにも目を瞠るものがあった。

http://sawakon.habiby.info/...

http://movie.goo.ne.jp/movies/...

リリアーナ・カヴァーニ女史の他作品

http://movie.goo.ne.jp/cast/52109/

踊るサテュロス

 

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The Dancing Satyr of Mazara

愛知万博を前に東京国立博物館 表慶館 にて特別展

1998年3月5日 シチリア沖 水深480mの海底から

漁船の底引き網に引き上げられる。

古典後期からヘレニズム期への移行期か

希臘美術 最高傑作と目されるブロンズ像。

 

東博 表慶館

バシリカ式教会堂の中央円蓋へ歩みを進むべく

そのドゥオモのちょうど真下

美しい 青緑の 時の澱 を纏った

 古代希臘 ディオニソスの眷族

  サテュロス との邂逅

失語 失神 墜落の刻

観ている私が かのめぐりを廻り踊る

 

視線は 暗きあなうら から這い上がり

踊り上るししむら

       捩れる体躯 

            逞しい胸筋

 かしいだかんばせ

       饗宴の法悦 の

 うつろな象牙の眸穿

     うねり 

        なびき 

            ゆらぐ 線刻の頭髪

 失われし手腕に幻視する

   テュルソス(松毬を附した蔦霊杖)と

        聖獣(豹) と 

          クラテル(酒盃) の 標

 

       さらに上昇する視線は

          中央円蓋の

         光 の 帰納する 

          極まりへ

            *

げに恵まれし身なるかな、幸ひに

神來の祕儀に参與して

そのいのち淨められ

聖なる拂穢の式にあづかりて

靈魂の聖団の證を享け

山深くバッコスの躁宴にふけり

且つはまた大母神キュベレーの

祕祀をともに祝ひつ ゝ

聖杖をふりかざし

蔦かづら髪にかづきて

ディオニュソスに供えまつるは!     

             Eurip.Bakkh.72-82 エウリピデス

 

山深きアジアの蛮神ディオニュソスの狂乱が、

恰も何者の権能を以てしても阻止し難き悪役の傳播するごとく、

村から村へ、都市から都市へと飛火して、忽ちのうちに全ヘラスの美しき天地を血腥き靈氣に充たして行つたのは、

人も知る如く西暦紀元前六世紀のことであった。

 

然らばディオニュソス神の驚くべき勝利の原因は何處にあったか。

秘密は「永遠の生命」に存したのである。

ディオニュソスは己が帰依者に永遠の生命を、久遠のいのちを保證し

「新しき人」となる道を教えた。

しかも此の神は、その祭禮に参與する信徒達に、永遠の生命を親しく體験せしめたのである。

惨虐狂燥の限りをつくし、凄愴なること目を覆わしむるごとき

野蛮醜悪なる手段によってゞはあったが、

この暗き祭禮の醸し出す異様な狂憑の痙攣の裡に沈倫する信徒達は、

小我を脱却して大我に合一するの法悦を直験し、

肉體の緊縛を離れた靈魂の宇宙生命への帰一還没を自ら直證することを許された。

彼等は永遠の生命に触れ、

新しき人として甦生せる者の言慮を絶する至福を體験した。

 

   井筒俊彦 『神秘哲学』 第一部希臘神秘哲學

    第一章 (1) ディオニュソス神 より

        昭和24年 光の書房

             * 

http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?...

 

『死都ブリュージュ 』 ジョルジュ・ローデンバッハ

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冥草舎  窪田 般彌訳

BROUGES-LA-MORTE 1892 Georges Rodenbach

 先日、何処だったか 大手書店の文庫平台に

赤帯岩波文庫の これ が積み上げられていました。

http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/32/2/...

 

重版がかかった様子もなく 今頃何故に…

判りました。2005/4/15日(金)~6/12(日)

BUNKAMURA で ベルギー象徴派展 がありますね。

画家フェルナン・クノップフ その他 

多くの同時代の芸術家たちが このお話に魅了されました。

 

書棚に眠ったこのうつくしい本を取り出して頁を繰ると

若気の至り かつて炊き込めた香が微かに馨ります。

さてさて このお話 

曇天の灰白の空を眺めていると浮かんでくる物語

 ゆうぐれの冷たい石畳に沁み入る弔鐘の音

暮れ方のなずむ光が齎すレエスの帷につくるほの白さ

にびいろの写し鏡 

堀割りの水辺に映る古い修道院は

しだいにその姿を冥い水底に沈めてゆく

 

死んだ妻の面影が 廃市ブリュージュ に溶け入り

ゆうぐれに彷徨する主人公ユーグは

妻の亡霊を街に見出そうとする

ユーグにとりこまれた 妻の生き写し 踊り子ジャヌは

 亡き妻の髪で締め上げられて窒息する女

 

ローデンバッハの憂愁と頽廃

「黄 昏」上田 敏訳『海潮音』所収も頷けます。

 福岡・春の柳川にでも行ってみたくなりました。

http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/...

『芳 惠』 藤島武二

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芳 惠 ほうけい 1926(大正15)年 63.3×51.5cm 油彩カンヴァス

第1回 聖徳太子奉賛会展覧会出品 藤島59歳時の作

 

この国の西洋画の歴史は、かれこれ100年足らず

黒田清輝藤島武二が、創設時から東京美術学校西洋画科の指導者であり、官展画壇の中枢に居続けた理由として共に薩摩出身である事をも考えると明治という時代の政治力が垣間見えて面白い。

 

 作家の実人生など鑑賞者には関係ない

 作品そのものから受け取ることのできる作品の力

 それのみを問題にすべきだ

       …と豪語していた知人の声が掠め飛ぶ

定まらぬ物憂げな視線を投げる真横顔の婦人

贅沢に宝石をあしらった髪飾りと

華麗な刺繍が施された中国服

藤島が青年時より求め続けた装飾美を表現した逸品 

この構図はやはり西洋画の影響か

ピサネッロ、ピィリッポ・リッヒ、アレッシオ・バルドビィネッティ

ボッティチェッリ、ポッライオーロhttp://www.tobikan.jp/museum/... などにも装飾的婦人肖像の横顔作品が見られる。

背景の雲…有元利夫作品にもこんな雲があったか…

 

藤島作品の秀作は、以下浪漫派絵画に代表される。

天平の面影」1902年ブリジストン美術館 重要文化財

「蝶」1904年

 文藝雑誌「明星」「スバル」の表紙・挿画

 与謝野晶子『みだれ髪』表紙

「黒扇」1908~09年 ブリジストン美術館 重要文化財

http://www.ishibashi-museum.gr.jp/...

http://www.bridgestone-museum.gr.jp/...

 38歳より渡欧(1905~10)帰国後は、

影響を受けた印象派後期印象派風の風景作品等を発表するが、殊に女性の肖像画に秀作が見られる。1926年、前年には治安維持法が公布施行。1943(昭和18)年 78歳没

 「蝶供養帖」1906年 2000頭に及ぶ蝶・蛾の写生帖は、

「蝶」http://www2u.biglobe.ne.jp/...の習作と考えられている。