もえぎの忘備録

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The Forgotten Kingdom: The Cathar Tragedy - The Albigensian Crusade

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『忘れられた王国 アルビジョワ十字軍/カタリ派の悲劇』

 ♪指揮: Jordi Savall 演奏団体: Hesperion XXI

♪録音 2009年4,6-8月 カタルーニャ自治州 カルドーナ城参事会教会

 発売日:2010年02月25日 フォーマット:SACDハイブリッド

構成数:3  製造国:輸入レーベル:Alia Vox  規格品番:AVSA9873

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 トルヴァトールの歌で辿る中世南仏の異端の世界

 

中世南仏において栄えた、キリスト教の異端カタリ派とそれに対するアルビジョア十字軍が主題。同時に、聖人サン・ベルナールがこの異端を、「キリスト教徒よりキリスト教的であり、信仰が純粋」だと述べたように、その背景には、教皇庁とフランス王家との現世的利害の一致や、教皇庁の世俗化があり、それに、フランシスコ会ドミニコ会の設立という、体制内からの刷新運動が絡みます。

また、射程も広く、カタリ派の起源、南仏隆盛の背景から、英仏100年戦争(ジャンヌ・ダルクの殉教)、東ローマ帝国の滅亡、東方カタリ派の終焉までを扱います。前作「エルサレム」と十字軍という点でつながりがあるのも興味深いところ。トルバドゥールの曲を中心に、近東の音楽やルネサンス時代のデュファイの曲まで収録されています。[コメント提供;キングインターナショナル](発売・販売元 提供資料)

 

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タワーレコードHP Early Music/Baroque予約していたCDが遅れて届いたものの

年初の書評で見つけた八木雄二著『天使はなぜ堕落するのか―中世哲学の興亡 』を読みながら、CD鑑賞が先になってしまうという遅々として進まぬ読書は、ひとえに私の脳味噌の怠り癖のせいであることでしょう。

ヨーロッパ中世、、解ったつもりになっていた高校生頃の世界史知識も、もう遙か彼方の事で、直近で記憶に残る読み物であればU:エーコ薔薇の名前あたりが想いあたりますが、それはキリスト教がローマに受け入れられた後、マリア信仰の起源や興隆、異端信仰の勃興への興味などをそそられ、絵画史などをザックリ流した経験から顧みて、はやり精神史ともいえる哲学史をおさらいしておくことは、必須であろうと長らく想いつつ、置き去りにしていた空白でありました。

9世紀あたりから

文献記録で現存するものは、一部特権階級の知識人や富裕層が構築した哲学に違いないのでしょうが、その背景には必ず、民衆運動を礎とした民衆の哲学があるはずであり、八木氏のことばを借りれば、キリスト教哲学が確立する古代の終わりのアウグスティヌスから中世に至る過程において、当時の地に生きる人人の生活実態の「理性認識の吟味」というものは、やはり文献を丁寧に辿ることからはじまり、、、、イスラム世界から入ってきたと謂える新プラトン主義や、アリストテレスの揺り戻しがこの時代を貫き覆っていた事など、行きつ戻りつしながらの読書ではありますが、著者の長らくの研究思索の時間を彷彿とさせる言葉に出逢える、なかなか興味深く面白い時間でありました。

 

中世哲学は、西欧キリスト教信仰の「理性認識の吟味」ということになるのですが、まだまだ研究の進まない未開の世界だということ、、、

そういう意味で考えれば、この音源を辿ることで得られるのは附随する感覚認識の吟味ということになり、なにものかその要諦に少しは近づけるかな、というところでしょうか、、、、。

 

さまざまな方向性からのアプローチで愉しみたいものです。

 3枚組CDは、5cmほどの重厚Bookに納められています。

フランス語・ドイツ語・英語の解説が同量で掲載されているためこのような装丁となったようです。 

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◎ CD1

 1. 「カタリ派の出現と全盛/南仏オクシタニアの隆盛(950頃-1204年)」 ◇I.「カタリ派の起源:東方キリスト教世界と西欧(950-1099年)」950年起源:ボゴミール派:ブルガリアの音楽(タクシームと舞曲)

 2. 1000年 東方キリスト教世界からヨーロッパへ:作曲者不詳:「甘い春の季節に」(1010年の写本)

 3. 1022年 オルレアンとトリノにおける、異端者たちの最初の火刑。:プランクトゥス1(器楽曲;太鼓、ドゥドゥク)

 4. 1040年アル=アンダルス地方から避難を余儀なくされたユダヤ人にオクシタニア地方は避難場所を与える。:三大元素、アレフ(気、1)、メム(水、40)、シン(火、300)(「創造(形成)の書」よりカバラ的文章)

 5. 1049年 ランス公会議において異端の非難決議がなされる。:「栄光の王」(器楽曲;太鼓、ベル、中世ハープ)

 6. 「聖なる父よ」(オック語による朗読)

 7. 1054年 東西教会の分裂(大シスマ):作曲者不詳:「両者の干渉で」(作者不詳(ビザンチン)の歌)

 8. 1099年 聖地への第1回十字軍。南仏(トゥールーズ伯)軍によるエルサレム南部地区の征服:十字軍のファンファーレ(器楽曲)

 9. II.「南仏オクシタニアの隆盛(1100-1159年)」1100年オクシタニア、アル=アンダルスのキリスト教徒のかがみ:作曲者不詳:タクシームとアンダルシア風舞曲

 10. 1111年ボゴミール派の高位聖職者バシレイオスがコンスタンティノープルにおいて火刑に処せられる:哀歌2(器楽曲;ドゥドゥク、カヴァル)

 11. 1117年 トゥルバドゥールの時代と「至上の愛」:ギエム・デ・ペイテュ(ポワティエ伯ギョーム):「新しい歌を私は作ろう」

 12. 1142年 アリエノール・ダキテーヌとルイ7世の離婚:ディア伯夫人(ベアトリツ):「気に入らないことも」

 13. 1143年 シュタインフェルトのエーヴェルウィンからクレルヴォーの聖ベルナルドゥスへの手紙:ベルナルドゥス師への書簡(朗読)

 14. 1157年 ラモン・ベレンゲー(ベレンゲル)4世死去(異端に抗するランス公会議):作曲者不詳:「わが心をば」

 15. III.「カタリ派の伸張(1160-1204年)」 1163年 シェーナウのエックベルトが、ラインラント地方の異端者たちを呼ぶのに、「カタリ派」という術語を「生み出す」。異端者たちは、ボン、ケルン、マインツにおいて火刑に処せられる:ヒルデガルト・フォン・ビンゲン:「気高く」(器楽曲)

 

◎ CD2

 1. 「アルビジョワ十字軍/南仏オクシタニアへの侵略(1204-1228年)」 ◇IV.「衝突に向けて(1204-1208年)」1204年起床ラッパ:ファンファーレ(トレブル・ショーム)

 2. 1204年ペラ1世によって取り仕切られた、カタリ派教皇特使であるシトー会修道士との間のカルカソンヌの論争:わたしは、あなたたちのために立てた計画をよく心に留めている、と主は言われる。(朗読;エレミア書第29章第11節)

 3. 作曲者不詳:「この世のことを考えると」

 4. 1207年 トゥールーズ伯ライモン6世、教皇インノケンティウス3世によって破門される:ギラウト・デ・ボルネイユ:「一番心地よく楽しかったのは」

 5. 1208年教皇特使カステルノーのピエールの暗殺:トゥデラのギエム:「シトー会の司祭たち」(第4詩)

 6. 1208年10月3日インノケンティウス3世、アルビ派への、キリスト教徒の地における最初の十字軍を布告する:「布告する」(朗読)

 7. 1208年十字軍の準備:トゥデラのギエム:「教皇様が知った時」(第5詩)

 8. V.「アルビジョワ十字軍(1209-1229年)」1209年十字軍の開始:ファンファーレと鬨の声(器楽曲)

 9. 1209年7月22日ベジエの包囲と大虐殺(死者20,000人):トゥデラのギエム:「フランスの御貴族様が」(第21詩)

 10. 1209年11月10日プランハ(プランクトゥス)「(ベジエ子爵)ライモン=ロジェ・ド・トランカヴェルの死への哀歌」:ギエム・オジエ・ノヴェッラ/ギラウト・デ・ボルネイユ:「それぞれの涙と嘆きの歌」

 11. 1211年 ラヴォール城の包囲と大虐殺。ラヴォール城の寡婦ジェラルダの殉教。400人のカタリ派が火刑に処せられる:トゥデラのギエム:「あれほど強い町、ラヴォールが叩きのめされた」(第68詩)

 12. 1211年 年代記:「教えに適う十字架像は」(朗読)

 13. 1213年2月1日 トゥールーズ伯ライモン6世を助ける約束を守るカトリック王ペラ1世に問う諷刺詩:ライモン・デ・ミラヴァル:「行け、ユゴネよ」

 14. 1213年9月 アラゴン王ペドロ2世についての歌:ライモン・デ・ミラヴァル:「歌い優しくすることが心にかなう」

 15. 1213年10月 ミュレの戦いにおける敗北とカトリック王ペラ1世の死:ライモン・デ・ミラヴァル:「復活祭の時節は」

 16. 1218年6月25日 シモン・ド・モンフォールの死:作曲者不詳:シャンソン「シモン・ド・モンフォールの墓碑銘」

 17. 1228年8月6日 トゥールーズ包囲と十字軍の終結:ギエム・フィゲイラ:「諷刺詩を作ることについて(シルヴェンテスを作りたい)」

 

◎ CD3

 1. 「カタリ派への迫害、離散と終焉(1229年-1463年)」 VI.「異端審問所:カタリ派信徒への迫害とカタリ派の消滅(1203-1300年)」 1229年11月 トゥールーズ公会議/1233年 グレゴリウス9世が、異端者制圧のため(教皇直属の)異端審問制を創設する:ファンファーレ(器楽曲)

 2. 偽の聖職者(司祭)に対する諷刺詩:ペイレ・カルデナル:「聖職者は、自らを羊飼いとみなすが」

 3. 1244年 モンセギュールにおける反乱、降伏、225人のカタリ派の火刑 : 哀歌(器楽曲;ドゥドゥク、カヴァル)

 4. 1252年 教書「アド・エクスティルパンダ(異端の根絶について)」における、拷問の合法化:「異端の根絶について」(朗読)

 5. 1252年 最後の審判における神を咎める諷刺詩:ペイレ・カルデナル:新即興諷刺詩

 6. 1268年 皇帝派(ギベリン)に対する教皇派(グェルフ)の勝利:「ベリカ」(エスタンピー)

 7. 1268年 異端審問官に対する諷刺詩:ギエム・モンタナゴル:「どのようなことについても注意を与える勇気を心得よ」

 8. 1276年 シルミオーネにおける降伏:(ロッシ写本より):プランクトゥス「彼女が手と美しい顔を洗うあいだ」(器楽曲)

 9. 1278年 ヴェローナの闘技場で200人のカタリ派が火刑に処せられる:「主の祈り(天に坐します我らの父よ)」(カタリ派の祈り)

 10. 1300年 カルカソンヌにおける異端審問官の過酷さに対しての暴動。聖職者、ドミニコ会説教師とフランスに対する諷刺詩:ペイレ・カルデナル:「ハヤブサもハゲワシも」

 11. VII.「カタルーニャへの離散と東方カタリ派の終焉(1309-1453年)」 1305年 カタリ派の、偽ヨハネ福音書第5章第4節に基づく外典「作曲者不詳(ラス・ウエルガス写本):「聞け、おお、海よ・・・」

 12. 1306年 フィリップ4世、フランスからユダヤ人を追放する。作曲者不詳(セファルディ)「フランスの王様」

 13. 1306年 ペイレ・オーティエの伝道「それは驚くほどのことではない」(朗読)

 14. 1309年 ヤクメとギエム・オーティエおよび、他のカタリ派が火刑に処せられる。葬送行進曲(太鼓)

 15. 1315年 ギエム・ベリバストがカタルーニャに亡命する:ギラウト・デ・ボルネイユ:「悲しみ故に耐えることができない」(器楽曲)

 16. 1321年 オクシタニアにおけるカタリ派最後の「完徳者」として知られるギエム・ベリバストが、ヴィルルージュ=テルムネで火刑によって死ぬ:哀歌3(器楽曲;ドゥドゥク、カヴァル)

 17. 1327年 アラゴンカタルーニャの王、アルフォンソ4世:作者不詳/デュファイ:「聞いてください、恵み深い創り主よ」

 18. 1337年 英仏100年戦争(開始):「処女」についてのバラッド(15世紀の詩、古い旋律に基づくジョルディ・サヴァールによる版)

 19. 1431年5月30日 オルレアンの少女「処女」ジャンヌが火刑に処せられる(19歳):ジョルディ・サヴァール(15世紀の作曲者不詳の旋律に基づく):プランクトゥス「おお、残酷な拷問が」

 20. 1453年オスマン帝国による、コンスタンティノープルの陥落:タクシームとマカーム「サバ・ウスレス・チェンベル」

 21. 1463年 東方カタリ派の終焉(1453年コンスタンティノープルと1463年ボスニア):哀歌4(器楽曲;カヴァル、ベル、太鼓)

 22. 1463年 コンスタンティノープルの聖母教会の哀歌:デュファイ:「おお、いとも哀れみ深い」

 23. 1463年 「よき人」への敬意:ポンス・ドルタファス/サヴァール:「私は分別をなくした」

 上記転載元 http://tower.jp/item/2669425/...